新潟県長岡市の司法書士事務所

アドリテム司法書士法人

相続放棄と権利放棄

2014年9月4日

相続でよく放棄をしたという話を聞きますが、実際に家庭裁判所で法的に「相続放棄」をしたことを指す場合は少なく、いわゆる「権利放棄」を指すことが多いようです。

こう説明すると相続の放棄には2種類あるかのようですが、法的な相続の放棄は民法で定める相続放棄ただ1つであり、家庭裁判所に書面を提出することで相続放棄の意思を表明します。
では権利放棄というのは何かというと、何も(あるいはほとんど)遺産をもらわなかったことを言うようです。権利放棄という言葉の正式な定義があるわけではないので、正式な相続放棄に対して、便宜権利放棄という言葉を使っている感じでしょうか。実際は権利放棄書面という書面はなく、遺産分割協議で遺産を相続をしなかったことをもって権利放棄をしたということになります。家庭裁判所に放棄の書面を出すわけではありません。

正式な相続放棄は家庭裁判所に被相続人の死亡を知ったときから3か月以内に行う必要があります。相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったという取扱いになります。相続人ではありませんから、遺産の一部を相続として分けてもらうことはできません。相続した人からもらったとすれば、それは贈与であり、相続ではありません。放棄をしたのに他の相続人から遺産の一部を分けてもらえば、贈与税が課税されるおそれがありますから、注意しましょう。
また相続人ではないということは、債務・負債を相続することもありません。借金を相続したくないという理由で、相続放棄を選択する方は現実に多いです。相続放棄をしなかったばかりに、多額の債務を相続してしまい自己破産しなければならなくなったという悲劇もあるのです。ちなみに債務の存在を知ったときから3か月以内なら、被相続人の死亡後何年経っていても相続放棄ができます。
なお相続放棄をして相続人ではなくなったといっても、生命保険の受取人になっている場合は受け取ることができます。また遺族年金を受け取ることもできます。死亡退職金を受け取ることもできます。

いわゆる権利放棄ですと、遺産をもらわないという遺産分割協議をすることになりますが、債務・負債は自動的に法定相続分に従って相続してしまいます。例え債務を負担しないということを協議に盛り込んでも、債権者には通じません。債権者が同意してくれなければ債務の負担を免れることはできません。
何も相続せず放棄をしたと思っていても、正式な相続放棄でない限りは、債務は相続してしまいますから、遺産分割協議の際は、債務・負債についても相続人間でよく確認して協議をしましょう。遺産分割協議が成立したあとで、債務の存在がわかっても相続放棄はできません。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要ですが、相続放棄は自分一人の考えで行うことができます。相続人の内相続放棄をした方がいれば、遺産分割協議はその方を除いて行うことになります。

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